※この記事は2026年4月の訪問をもとに書いています
さつきが咲く季節に、賢島を訪れました。
英虞湾を望む高台に建つ志摩観光ホテルの庭には、赤やピンクのさつきが満開でした。今年2026年、このホテルは開業75周年を迎えました。
戦後初の純洋式リゾートホテルとして誕生。今回は、75周年という節目に合わせて、このホテルの歴史を振り返ってみました。

志摩観光ホテルの始まり|1951年、戦後の賢島で
志摩観光ホテルが開業したのは、1951年4月3日のことです。
出資したのは近鉄・三重県・三重交通の3者。伊勢志摩が国立公園に指定された翌年、美しい自然の中に外国からのお客様を迎えられる本格的な洋式ホテルを建てたいという声が高まっていました。当時の賢島は、真珠の買い付けに訪れる外国人バイヤーで賑わっており、国際的な宿泊施設への需要が切実だったのです。
村野藤吾が手がけた建築|制約が生んだ、もうひとつの歴史
設計を担当したのは、建築家の村野藤吾氏です。昭和を代表する建築の巨匠として、日本各地に多くの名建築を残した人物です。
ただし、建設当時は戦後の物資が乏しい時代でした。新しい材料だけで建てることが難しい状況の中、鈴鹿にあった旧海軍工廠の高等官集会所の柱や梁を移築して使ったといいます。時代の制約を逆手に取ったその判断が、このホテルに特別な歴史的背景を与えています。
3つの建物が刻む、75年の変遷
現在の志摩観光ホテルは、3つの建物から成り立っています。それぞれが異なる時代に生まれ、それぞれの個性を持ちながら、ひとつのホテルとして機能しています。
ザ クラブ|1951年、創業時の建物
最も古い建物で、村野藤吾氏の意匠を今に伝える木造のクラシックホテルです。
館内をよく見ると、しっかりとした太い梁が巡らされているのがわかります。これはかつてこの場所にあった和食レストラン「はまゆう」の時代から残るもの。現在は「リアン」というカフェ・バーラウンジとして生まれ変わり、お酒を楽しみながらゆっくり過ごせる空間になっています。ここは「テレビ番組『新・美の巨人たち』でも紹介されています。梁を見上げると、長い時間の積み重ねをしみじみと感じます。
ザ・クラブには志摩観光ホテルの歴史年表が飾られていたり、山崎豊子さんが執筆に使われていた机、伊勢志摩サミットで使用されていたテーブルも展示されています(クラシックのレストランにも展示あり)。館内ツアーもあるので、参加されるとより楽しめます。
リアンのお庭には、昭和天皇の御製を刻んだ碑が立っています。ホテルの廊下やベイスイートへと続く通路にも、彫刻やゆかりの碑がさりげなく置かれていて、歩くたびに文化的な香りを感じます。
ザ クラシック|1969年完成、英虞湾を正面に臨む宿泊棟
私がこのホテルでおすすめしたいのはザ クラシックから見た英虞湾です。
実はこのホテル、最初から英虞湾を見るために建てられた場所でもあります。その言葉の意味を、ここに立つと実感します。ザ ベイスイートから見る英虞湾も美しいのですが、英虞湾の穏やかな海と、そこに浮かぶ真珠筏の美しさを賓客に堪能してもらうことが最大の目的といわれた、最初の建設地。高台から見るもよし、クラシックのラウンジから見るもよしです。特に夕日の時間がおすすめです。
特に、英虞湾の真ん中に夕陽が沈む絶好のシーズンは2月。ザ クラシックの正面にまっすぐ夕日が沈んでいきます。年間でもあの瞬間の美しさは格別です。
ベイスイートの展望庭園が有名ですが、クラシックにも屋上に展望台があります。2段階に分かれた構造になっていて、上の段では英虞湾をはじめ、橋の向かい側や山側(ここは展望所の建物に一部が隠れます)の方まで360度見渡すことができるのです。一段下がると山側の景色も建物に隠されることなく視界に入ってきます。今回は晴天に恵まれ、最高の眺めを楽しむことができました。
2015年・2016年のサミット開催を見越してクラシックの客室は大きくリニューアルされました。大階段がなくなってしまったのはびっくりしましたが、アンバサダースイートが誕生し、全体的に一層洗練された空間に生まれ変わっています。プレミアムツインの窓際にはベンチチェアがあり、横向きに腰を下ろすと、ベイスイートと英虞湾が一枚の絵のように広がります。


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ザ ベイスイート|2008年開業、高台にある全室スイートのホテル
2008年に開業した全室スイートの建物です。
お部屋は広く、設備もすべて新しく、下の階にはお風呂やスパも備わっています。洋食・和食レストランともに、こじんまりとした規模なので、料理を運んでくださるスタッフの方と自然に言葉を交わせる雰囲気があります。洋食レストランの「ラ・メール」では、現在の総料理長・樋口宏江シェフが手がけるフレンチを、近い距離で味わえるのはここならではです。
夕暮れの時間帯、ディナータイムの始まりの時刻5時半から6時ごろに外を眺めるのがおすすめです。空の色が少しずつ変わっていく様子を、湾を見渡しながら味わうことができます。日が暮れると、向かいの施設のライトだけがぽっかりと水面に浮かんで、それもまた静かで美しい。ガラスに映るレストランの絵画も美しいです。

志摩観光ホテル ザ ベイスイートを予約する
▶ 一休.com|高級ホテル・旅館専門サイトで見る
※一休のリンクはクラシックのページが表示されます。ベイスイートはページ内でご確認ください。
このホテルが舞台の山崎豊子さんのドラマ「華麗なる一族」、いくつかの動画配信サービスで見ることができます。もちろん、志摩観光ホテルで執筆された原作本もあります。お泊まりの前にぜひ。
アマゾンプライムで「華麗なる一族」をみる
志摩観光ホテルで執筆された原作本(以下のものはkindle版です)はこちら。
3館それぞれの「香り」という演出
志摩観光ホテルには、3つの建物ごとに異なるオリジナルの香りがあります。
| 建物 | 香りのイメージ | 主な香料 |
|---|---|---|
| ザ クラブ | 森林浴 | サイプレス・ローズマリー・セージ |
| ザ クラシック | リアス海岸の空気 | シトラス・ウッディノート |
| ザ ベイスイート | 華やかなフローラル | ガーデンローズ・ジャスミン・ムスク |
ロビーに一歩入ると、その建物の香りが出迎えてくれます。ショップではリードディフューザーとして販売されており、詰め替え用リフィルも揃っています。旅の記憶を香りとして持ち帰れる、さりげない工夫です。お家でもシマカン気分が味わえるので、気に入っています。
ホテルの敷地内に金刀比羅宮(ことひらぐう)があります
あまり知られていないのですが、志摩観光ホテルの敷地内に金刀比羅宮(ことひらぐう)があります。
ホテルの庭園から続く道の先にあり、地元では「賢島の守り神」として、また海上交通の守り神として古くから信仰されています。この金刀比羅宮(ことひらぐう)はホテルが開業する前の昭和5年にはすでに現在の場所に鎮座していたそうです。ホテル庭園から向かう道はきれいに整備されています。ただ、雨上がりは、少し歩きにくいです。おしゃれな靴でお出かけの際はご注意を。
数段ですが、社殿へ上がる階段があります。両側に手すりはありません。お足元が心配な方はお気をつけください。
開業の年に訪れた昭和天皇|英虞湾に残る一首
1951年11月、開業からわずか半年後に、昭和天皇がこのホテルを訪れました。戦後の地方視察の一環でした。御製の句碑が庭園内に置かれています。
賢島の高台からご覧になった英虞湾の景色は、とりわけ印象深かったようです。
以来、皇室は昭和から平成にかけて幾度もこのホテルを訪れており、最近は現在の天皇皇后両陛下の2025年のご訪問が報道されました。
2016年5月に開催された「G7伊勢志摩サミット」会場
志摩観光ホテルは2016年5月に開催された「G7伊勢志摩サミット」の会場となりました。
ザ ベイスイート:首脳会議のメイン会場となりました。特に屋上庭園は、各国首脳が英虞湾をバックに記念撮影を行った「ワーキング・ランチ」の舞台として有名です。
ザ クラシック:ワーキング・ディナーの会場となりました。
ザ クラブ:昭和26年に開業した旧館を改装した建物で、サミット期間中は各国首脳の休憩や小規模な打ち合わせに使用されました。


まとめ|75年という時間が証明するもの
戦後の物資不足の中で産声をあげ、海軍施設の部材を転用した建物が、75年後も現役で人を迎えている。その事実に、このホテルの底力を感じます。
屋上の展望台、敷地内の神社、お庭に佇む御製の碑。知れば知るほど、このホテルには層のある歴史があります。2026年4月25日には、開業75周年記念晩餐会が開催されます。定員はすでに埋まっていましたが、こうした節目を知った上で訪れると、見えてくるものが変わってくるかもしれません。
泊まってみたい方はこちら
参考:志摩観光ホテル公式サイトをもとに作成しています。
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Have a nice trip! (^^)/
本記事は、筆者の実体験と撮影写真をもとに執筆しています。読みやすさ向上のため、一部AIを補助的に活用しています。
